「児童扶養手当は、遺族年金とは別にもらえるよ」
そう教えてくれた人がいました。
ひとり親になったら児童扶養手当がある。私もそう思っていたので、市役所に電話をして聞いてみました。
返ってきた答えは、こうでした。
「遺族年金のほうが多いので、出ません」
この記事では、そのときに分かったことを書きます。実際にいくらと比べられるのか、なぜ「もらえた」という話が出てくるのか、そして年金をもらっていても申請したほうがいい場合について、順番に書きます。
児童扶養手当は、いくらもらえるものなのか
まず、比べる相手の金額を知らないと話が進みません。
令和8年度(2026年度)の児童扶養手当は、こうなっています。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 児童1人・全部支給 | 48,050円 |
| 児童1人・一部支給 | 48,040円 〜 11,340円 |
| 2人目以降の加算(1人につき)・全部支給 | 11,350円 |
| 2人目以降の加算(1人につき)・一部支給 | 11,340円 〜 5,680円 |
支給は年6回です。1月、3月、5月、7月、9月、11月の奇数月に、2か月分ずつ振り込まれます。毎月入るわけではありません。
うちは子どもが2人なので、全部支給なら48,050円 + 11,350円 = 月59,400円。これが、うちが受け取れるはずだった上限額です。
「両方もらう」ことはできない
ここからが本題です。公的年金と児童扶養手当は、両方をそのまま受け取ることはできません。
児童扶養手当の額が年金額を上回る場合、その差額を児童扶養手当として支給
つまり、年金のほうが高ければ児童扶養手当は出ません。年金のほうが低ければ、その差額だけが出ます。
「どちらか選ぶ」でも「両方もらえる」でもなく、高いほうに合わせて、足りない分だけが出る仕組みです。
うちの場合を、実際の数字で計算してみます
私が受け取っている遺族年金は、通知書の数字でこうなっています。
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | 約131万円 |
| 遺族厚生年金 | 約39万円 |
| 合計 | 約170万円 |
月に直すと、約14万2,000円です。さきほどの児童扶養手当の上限は、月59,400円でした。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 遺族年金 | 142,000円 |
| 児童扶養手当(満額) | 59,400円 |
| 差 | 年金のほうが 82,600円多い |
年金のほうが8万円以上高いので、差額はゼロ。児童扶養手当は出ません。
市役所の方が電話口で即答できたのは、この計算をするだけだからです。
「そんなはずはない」と言われました
答えを聞いたあと、教えてくれた人に伝えました。「そんなはずはないと思うけど」。
その人は、同じような立場で児童扶養手当をもらえていた人を知っている、と言いました。10年以上前の話だそうです。
気になって調べました。そして、逆だったことが分かりました。
2014年12月1日に、制度が変わっています
| 時期 | 公的年金を受け取れる人の扱い |
|---|---|
| 2014年11月まで | 児童扶養手当を 一切受け取れなかった |
| 2014年12月から | 年金額が手当額より低ければ、その差額を受け取れる |
改正前は、年金の額がいくらであっても、公的年金を受け取れる人は児童扶養手当の対象外でした。金額の比較すらありませんでした。
制度は「もらえる方向」に変わっています。10年以上前のほうが、もらえませんでした。
だから「昔はもらえた」という記憶があるとしたら、その方は公的年金を受け取っていなかったか、別の手当と混ざっているのかもしれません。自治体独自の遺児手当や児童育成手当など、遺族年金と一緒に受け取れるものもあります。
誰も間違ったことを言っていないのに、話が合わない。そのくらい、分かりにくい制度だと思います。
年金だけが理由ではありません。所得制限もあります
この話を書いたあと、同じように配偶者を亡くされた方から、こんな声をいただきました。
遺族年金と、自分の収入だったから、一切手当をもらえなかった
そうなんです。児童扶養手当には所得制限があります。
年金がなくても、働いて得ている収入が限度額を超えていれば、手当は出ないか、一部支給になります。見られるのは本人の所得だけではなく、同居している扶養義務者(親など)の所得も対象です。
限度額は扶養している人数によって変わります。令和6年11月からは限度額と第3子以降の加算額が引き上げられているので、「前に調べたときはダメだった」という方も、いまの基準で確認する価値があります。
具体的な限度額は自治体の窓口か、お住まいの市区町村のホームページで確認してください。
もらえたものもありました:ひとり親医療費助成
児童扶養手当は出ませんでしたが、ひとり親医療費助成のほうは対象でした。
これは医療費の自己負担を軽くしてくれる制度で、遺族年金をもらっていても受けられます。
ただし、これは自治体の制度なので、名前も、対象になる年齢も、負担の額も、住んでいる場所によって違います。うちの自治体は18歳までが対象でした。
私はこの助成があることを知って、自分がかけていた医療保険を解約しました。そのくらい、家計への影響は小さくありません。
「ひとり親向けの支援」とひとくくりにすると、ここを見落とします。もらえないものと、もらえるものが混ざっています。
もうひとつ、振り込まれているものがあります:年金生活者支援給付金
遺族年金の手続きのとき、係の人に「これも入りますよ」と言われました。
「何ですか」と聞くと、「微々たる、おまけみたいなものです」という答えでした。
それが、年金生活者支援給付金です。遺族基礎年金を受けている人の分は、「遺族年金生活者支援給付金」といいます。
うちには、2か月ごとに11,000円ほどが振り込まれています。
| 月額 | 5,620円(令和8年10月時点) |
| 振り込み | 偶数月の中旬。年金と同じ口座・同じ日に、年金とは別に入る |
| 条件① | 遺族基礎年金を受けている |
| 条件② | 前年の所得が4,918,000円以下(扶養親族の数に応じて増える。令和8年10月時点) |
| 手続き | 請求書の提出が必要 |
大事なのは、自動では始まらないことです。請求書を出さないと受け取れません。
原則は、手続きをした翌月の分からです。ただ、遺族基礎年金を受けられるようになった日から3か月以内に請求すれば、その日までさかのぼって受け取れます。
遺族基礎年金を受けていることが条件なので、遺族基礎年金が終わると、この給付金も終わります。
年金をもらっていても、申請したほうがいい場合
「どうせ出ないから」と申請しないでいると、損をすることがあります。児童扶養手当のほうが高くなるケースがあるからです。
- 遺族厚生年金だけで、遺族基礎年金の対象にならない場合
- 亡くなった方の厚生年金の加入期間が短く、年金額が少ない場合
- 子どもの人数が多く、児童扶養手当の加算が積み上がる場合
このようなときは、年金額が児童扶養手当の額を下回り、差額が出ることがあります。
また、年金の額は一生同じではありません。遺族基礎年金は、いちばん下のお子さんが18歳になった年度末で終わります。そのタイミングで年金額が下がるので、条件が変わる可能性があります。
自分で計算して諦めるのではなく、一度、窓口で金額を伝えて聞いてみてください。私の場合は電話で数分でした。
窓口で聞くときに、用意しておくもの
電話でも窓口でも、聞かれるのはこの2つです。
- 年金の額(年金証書や、年金決定通知書に書いてあります)
- 子どもの人数と年齢
年金証書が手元にあれば、それを見ながら電話すれば足ります。私はそうしました。そして、もうひとつ。
「児童扶養手当以外に、うちが対象になる制度はありますか」と聞いてください。
聞かないと、教えてもらえません。窓口は、聞かれたことにしか答えられないことが多いからです。私はこれで、ひとり親医療費助成のことを知りました。
もらえる場合の、申請の流れと現況届
窓口で聞いて「もらえる」とわかったら、申請します。私はもらえなかったので申請はしていませんが、流れを調べてまとめておきます。細かい書類は市区町村によって違うので、窓口で確認してください。
申請の流れ
- どこで:住んでいる市区町村の役所(子育てやひとり親の担当窓口)
- だれが:子どもを育てている親、または養育者
- いつから出るか:認定されると、申請した月の翌月分から支給されます。さかのぼってはもらえないので、早めの申請が大切です
主な必要書類
- 児童扶養手当認定請求書(窓口でもらえます)
- 申請する人と子どもの戸籍謄本
- マイナンバーがわかるもの
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 年金をもらっている場合は、年金証書や年金決定通知書
毎年8月の「現況届」
児童扶養手当をもらっている人は、毎年8月に「現況届」を出します。引き続き受け取れるかを確認するための手続きです。
出さないと、その年の11月分から手当が止まります。また、出さないまま2年たつと、受け取る権利がなくなることがあります。
まとめ
- 児童扶養手当は、児童1人で月48,050円(全部支給)、2人目以降は1人につき11,350円。奇数月に2か月分ずつ
- 公的年金と両方はもらえない。年金のほうが高ければ出ない。低ければ差額が出る
- うちは遺族年金が月14万2,000円、手当の満額が月59,400円だったので、出なかった
- 2014年12月1日より前は、年金をもらっていると一切出なかった。制度は「もらえる方向」に変わっている
- 年金がなくても、所得制限で出ないことがある
- ひとり親医療費助成は、遺族年金をもらっていても対象になる(自治体によって内容が違う)
- 年金生活者支援給付金(月5,620円)は、請求書を出さないと始まらない
- 「どうせ出ない」と決めずに、年金の額と子どもの人数を持って窓口で聞く
もらえるものと、もらえないものがあります。どちらなのかは、窓口で聞かないと分かりません。
参考・出典
- こども家庭庁「児童扶養手当について」 https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/fuyou-teate
- こども家庭庁「児童扶養手当制度の概要」(令和8年度支給額・併給調整)
- 児童扶養手当法の改正Q&A(公的年金等と合わせて受給する場合)
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」 https://www.mhlw.go.jp/nenkinkyuufukin/system.html
※ 金額や所得限度額は年度によって変わります。また、ひとり親医療費助成など自治体独自の制度は地域によって内容が異なります。最新の情報は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

