ブルガダ症候群で夫が突然死|30〜40代の突然死リスクと残された家族のリアルな話

健康

「夫がブルガダ症候群と診断された」「健康診断の心電図でブルガダ型を指摘された」——そんな検索でこの記事にたどり着いた方へ。私の夫は、ブルガダ症候群と診断された5年後に、突然亡くなりました。40代でした。

この記事では、診断から突然死までの5年間で私たち家族が実際に経験したこと、そして「あのときこうしておけば」と今も思うことを、残された妻の立場から正直に書きます。医学的な情報だけでなく、家族として何を知っておくべきだったか——同じ病気と向き合う方の役に立てばと思っています。

夫が亡くなった日、対応してくださった警察の方にこう言われました。「30〜40代の男性の突然死で、ブルガダ症候群が原因というケースは、実は多いんですよ」。診断されていたのに、私たちはどこかで「自分たちは大丈夫」と思っていました。

ブルガダ症候群とは?なぜ突然死につながるのか

ブルガダ症候群は、心臓の電気信号に異常が起きる病気です。ある日突然、心室細動(心臓が細かく震えて血液を送り出せなくなる状態)が起こり、それが突然死につながることがあります。

特徴は、心臓そのものに構造上の異常がなくても起こること。そして日本では、30〜40代の一見健康な男性に多いとされていることです(出典:難病情報センター)。健康そのものに見える人が、ある日前ぶれもなく倒れる。そこにこの病気の怖さがあります。

職場での怪我がきっかけで、偶然見つかった

2020年、夫は職場でけがをして倒れました。搬送された病院で検査を受けたところ、偶然にもブルガダ症候群が見つかったのです。もしこの怪我がなければ、診断されないまま過ごしていたかもしれません。

怪我の治療が終わったあと、心臓の検査入院や通院が始まりました。医師からは「根本的な治療法は、ICD(植込み型除細動器)しかない」と説明を受けました。ICDは、危険な不整脈が起きたときに電気ショックで心臓を正常に戻す、命綱のような医療機器です。

夫は、ICD(ペースメーカー)を断った

「体に機械を入れたくない」——夫ははっきりそう言いました。日常生活への影響や、機器を入れることへの抵抗感。理由はいくつかあったと思います。

私はとても悩みました。無理にでも説得すべきか、本人の意思を尊重すべきか。結局、私たちは本人の気持ちを尊重する選択をしました。今もその判断が正しかったのか、私にはわかりません。

診断後も、ほとんど普通の生活だった

医師からは「お酒やストレス、発熱に気をつけて」と言われていました。ブルガダ症候群は、発熱時に危険な不整脈が起きやすくなることが知られています。

でも時間が経つにつれ、通院は減り、やがて行かなくなりました。夫は大好きなバレーボールを続け、お酒も飲み、傍から見れば普通の生活でした。正直に言えば、夫も私も、少しずつ危機感がうすれていったのです。この「慣れ」が、いちばん怖いことだったと今は思います。

診断後は、新しい生命保険に入れなかった

診断を受けてから、保険の見直しをしようとしたことがあります。でも、ブルガダ症候群があると、新規で一般的な生命保険に入ることはほぼできませんでした。診断前から入っていた保険を「見直す」「乗り換える」こと自体が、大きなリスクだったのです。

持病がある方に、まず知ってほしいことがあります。診断前に入っていた保険があるなら、それは安易に解約しないこと。いま入っている保障を手放してしまうと、二度と同じ条件では入れないことがあります。

そのうえで、持病があっても入りやすい「引受基準緩和型保険」や「無告知型保険」という選択肢もあります。保険料は一般的なものより高めですが、「何も入れない」よりは安心につながる場合があります。自分の状況で何が可能かは、保険の専門家に一度相談してみるのが確実です。

「今の保険を続けるべきか」「持病があっても入れる保険はあるか」——こうした判断は、一人で抱え込まないでください。加入中の保険会社や、お住まいの自治体の無料相談窓口でも聞けます。診断がついたあとは選択肢が狭まるので、早めに動く方が結果的に楽です。

健康診断の心電図で「引っかかる」ことがあった

ふり返ると、夫は毎年の健康診断で、心電図に引っかかることが何度かありました。ただ「精密検査では異常なし」と言われたこともあり、深刻に受け止めていませんでした。

ブルガダ症候群は、心電図に特徴的な「ブルガダ型」の波形が出ることがありますが、常に出るとは限りません。「たまにしか出ない」「発熱時だけ出る」という人もいます。だからこそ、一度でも心電図で指摘されたことがある方は、症状がなくても、循環器の専門医に相談してほしいのです。

「あなただけじゃない」と、警察の方に言われた

冒頭に書いた警察の方の言葉を、私はいまも忘れられません。診断されていたのに、どこかで「自分たちは大丈夫」と思っていた。その気持ちが、今も胸に残っています。

症状のない時期が長く続くと、病気があること自体を忘れてしまいます。責めているのではなく、そういうものなんだと思います。だからこそ、家族が定期的に思い出せる仕組みがいると感じています。

遺伝について、私は何も言われませんでした

診断のときも、夫が亡くなったあとも、医師から遺伝の話は出ませんでした。

あとから調べて知ったのですが、ブルガダ症候群は遺伝することがある病気です。常染色体顕性遺伝という形式で、血縁者にも心電図検査が勧められています。日本循環器学会のガイドラインでも、三親等以内の突然死の家族歴はリスク評価の項目に入っています。

うちには小学生の子どもが2人います。息子は生後4か月のとき、心外膜炎で緊急入院しました。原因は分からないままで、いまは通院もしていません。ブルガダと関係があるのかは分かりません。

夫の父も、夫が亡くなる1か月前に心臓のカテーテル手術を受けました。これもブルガダではありません。

ひとつひとつは別の病気です。それでも、心臓のことが続いているという事実は、私の中に残っています。

血縁の方が診断された方、あるいは突然亡くされた方へ。循環器内科で「家族も検査した方がいいですか」と、一度だけ聞いてみてください。心電図なら数分で終わります。

私も、これから子どもたちのことを相談するつもりです。

同じ病気と向き合うご家族へ、今できること

夫を亡くし、私は小学生の子ども2人を一人で育てています。役所や銀行の手続き、遺族年金、保険の請求——悲しむ暇もないほど、やることがありました(その大変さは「夫が亡くなったあとのお金の手続き」に、最初の1年のお金の話は「最初の1年、お金で一番困ったこと」に書いています)。

その経験から、今ブルガダ症候群と向き合うご家族に伝えたいことが3つあります。

1. ICD(植込み型除細動器)を、家族みんなで真剣に話し合ってほしい。
夫の決断を責めたいわけではありません。制限なく好きなことをして生きられたのは、よかったと思っています。でも「もしICDを入れていたら」という気持ちは、正直今もあります。どちらが正解ということではありません。だからこそ、医師と何度も話し合い、家族全員で選んでほしいのです。

2. 発熱に気をつけて。
ブルガダ症候群は、高熱のときに危険な不整脈が起きやすくなります。発熱時は早めに解熱し、体調が悪いときは無理をしないこと。これは家族が声をかけてあげられる部分です。

3. 今の保険を手放さないで。そして、お金の備えを一度整理して。
診断後は新しい保険に入りにくくなります。今ある保障を守りつつ、万一のときに家族がどう暮らしていくかを、元気なうちに具体的に計算しておく。それだけで、残される側の負担はまったく違います。

「万一のとき、遺族年金や手当でいくら入るのか」は、元気なうちに一度計算しておいてください。遺族年金の金額や、子どもが18歳になったあとにどう変わるかは、こちらの記事にまとめています。

まとめ:ブルガダ症候群は「見えない時限爆弾」かもしれない

ブルガダ症候群は、症状のない時期が長く続くことがあります。だからこそ「治った」「大丈夫」と思ってしまいやすい。でも、心臓の中の性質は変わっていません。

健康診断で心電図に引っかかったことがある方、身近にブルガダ症候群と診断された方がいる方は、ぜひ一度、循環器の専門医に相談してください。そして家族で、もしもの備えを話しておいてください。私のような後悔をする人が、一人でも減りますように。

▶ 関連記事:遺族年金は一生もらえない。子どもが18歳で終わると知って、老後を計算してみた

よくある質問(ブルガダ症候群と家族の備え)

Q. ブルガダ症候群は必ず突然死するのですか?
A. いいえ。診断されても、生涯なにも起こらない方もいます。ただしリスクの程度は人により大きく異なり、失神歴や家族歴などによって変わります。自己判断せず、循環器の専門医の評価を受けることが大切です。

Q. 健康診断でブルガダ型と言われました。どうすればいい?
A. 症状がなくても、循環器内科(できれば不整脈を専門とする医療機関)を受診してください。ブルガダ型の波形は「たまに出る」「発熱時だけ出る」こともあり、専門的な検査が必要です。

Q. 家族が診断されました。まず何をすべき?
A. ①医師とICDの必要性を家族で話し合う、②発熱時の対応を家族で共有する、③今ある保険を安易に解約せず、万一の備えを整理する。この3つが、家族としてできる現実的な一歩です。

Q. 診断後でも入れる保険はありますか?
A. 一般的な生命保険は難しくても、引受基準緩和型・無告知型という選択肢があります。条件は人により異なるため、保険の専門家に相談して確認するのが確実です。

参考・出典

難病情報センター「ブルガダ症候群」
厚生労働省「突然死(不整脈等)の予防に関する調査研究」

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